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2007年6月27日号
IT・デジタル関係をテーマにした「大前研一のIT時評」が夕刊フジで毎月第四金曜日に掲載されております。
 
テーマ1:放送は通信に「従属」へ
 総務省の研究会は先ごろ、通信と放送の総合的な法体系に関する中間報告をまとめた。ブロードバンドやデジタル放送の普及により、通信と放送の垣根が低くなってきた現状を踏まえ、電気通信事業法や放送法などを一本化、2011年に「情報通信法(仮称)」を制定する方針。
 

アメリカは十数年も前に一本化の法律を作り、政策を進めています。日本は郵政省―いまの総務省の中に、放送に関する部署と通信に関する部署があり、この2部署が別々に法律を策定しています。

しかも、一方はNHKをはじめとする放送利権、もう一方はNTTなどの通信利権を握っており、この2部署が分かれていたために放送と通信は長く別々の法律に縛られていました。

たとえば、私が出演している「大前研一ライブ」はCS(通信衛星)を使ったCS放送ですが、NHKなどはBS(放送衛星)を使うBS放送を行っています。ところが実はこの2つの衛星、部品などは同じものなのです。にもかかわらず、放送免許は別々に取らねばなりません。また、どう考えても放送なのですが、私の方は通信衛星、と呼ばれています。

通信と放送の垣根がなくなることは、CSが始まった10年前にすでにわかっていました。いまごろになって「研究会」だなんて何事かと思いますね。しかも、法律が制定されるのは2011年だというのですから、あきれます。

この法律が制定されるころには、通信と放送は「融合」するのではなく、通信が放送を呑み込んでいることでしょう。放送局の人たちはまだ抵抗していますが、実質的に放送は通信に従属する形となると思います。

 
 
テーマ2:次世代高速無線通信システム、ドコモやKDDIが買収で終わりか
 総務省は今秋にも次世代高速無線通信システムの免許交付先企業を決定するが、既存の携帯電話会社には交付しない方針。現状ではアッカネットワークスとウィルコムが有力視されており、NTTドコモやKDDIなどは他社との連携を模索している。
 

これも“役所病”の一種で、これ以上ドコモやauを強くしたくないという役人の気持ちが混乱を大きくしています。

ただ、いま下馬評に挙がっている2社には、新しい帯域のネットワークを作る力はありません。結局、免許を交付された企業をドコモやKDDIが買収して終わり、という流れになるのではないかと私は思います。

 
 

テーマ3:5月、ソフトバンクが純増数でトップに
 携帯電話契約の純増数で、5月はソフトバンクモバイルがトップになった。

 

この半年くらいの純増を示したグラフを見ると、ソフトバンクモバイルが自力で頑張ったというより、他の2社の純増が減った結果、トップに立ったという感じですね。

昨年10月のナンバーポータビリティー(MNP)では、ドコモが大負けしましたが、実はソフトバンクモバイルも負け組です。ただ、MNP開始から半年が過ぎ、そのインパクトは薄れてきました。これから先はサービスを前面に出した持久戦となります。シェアも大きくは動かないでしょう。

ソフトバンクモバイルは家族間の通話無料サービスなどでシェアを伸ばしましたが、そこで問題なのが収益性です。家族間で無料というプランは収入をかなり犠牲にしていますからね。

ただでさえ借金漬けの同社が、収益を犠牲にしてもボリュームを取りにいくという戦略をとることが果たして正しいのか。それは来年3月期の決算を見なければわかりません。ただ、私は純増数だけ比較して勝った負けたというレベルの問題ではないと思います。

 
 
テーマ4:米デル、8,800人を削減
 米デルは先月、全従業員の10%にあたる約8,800人を削減すると発表した。
 

デルは、創業者のマイケル・デル氏が一線に復帰しました。しかし、最盛期の勢いを取り戻すのは無理ではないかというのが私の意見です。コストをカットし、従来のような直販だけでなく店舗販売にも乗り出す―というのがデル氏の新方針ですが、それだけの策で難局を乗り切るのは難しいでしょう。

デル氏は、自分が一線を離れていた間に起きた半導体産業の大きな変化が理解できていません。メモリーが安くなり、個別注文を聞いてオーダーメードで作るよりも、ほとんどの人の要望をあらかじめ組み込んだパソコンを安く作れるようになったからです。

買いたたきと従業員減らしというコストダウン策で縮小均衡を狙うつもりでしょうが、逆に言えばそれ以外に知恵が浮かばないのかもしれません。

デル社をトップに押し上げたころのデル氏はすばらしい経営者でした。しかし、それほどの経営者でも時代の流れには勝てないということです。

 
 
テーマ5:米アップル「ユーチューブ」と提携
 米アップルは、動画投稿サイト「ユーチューブ」と提携。同社の「アップルTV」にユーチューブの映像を検索・視聴できるサービスを追加した。
 

アップルはマイクロソフトと違い、ユーチューブすなわちグーグルと提携しても、あまり影響を受けません。マイクロソフトは自社で検索サイトなどを運営していますので、グーグルとは競合します。

アップルTVと提携することでユーチューブはまたひとつ前進するでしょうね。ただ、課題は画質です。アップルTVで再生するのに、ユーチューブの画質はいまひとつです。もっと画質の高い動画サービスが現れてくると、ユーチューブでさえも足下をすくわれる可能性があります。

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