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2008年2月29日号
IT・デジタル関係をテーマにした「大前研一のIT時評」が夕刊フジで毎月第四金曜日に掲載されております。
 
テーマ1:ヤフー 避けられない買収提案
マイクロソフトによるヤフー買収をめぐり、米メディア大手のニューズ・コーポレーションが傘下のインターネット関連事業をヤフーと統合する交渉を進めていることが分かった。事業統合すれば、ニューズはヤフーに約20%を出資する筆頭株主となる。
 

ニューズは米SNS最大手の「マイスペース」も持っているので、ルパート・マードック会長としては、これとヤフーを統合したいという思惑があるのでしょう。

ただ、マイスペースはヤフーのようなポータルサイトとはなじまないもので、思うほどの効果は上げられないでしょう。

なにより、マイクロソフトが提案しているプレミアムをヤフーが否定するのは非常に難しいと思います。ニューズがいくら頑張ってもヤフーの20%の株しか買えないわけですから、446億ドルで100%買うというマイクロソフトの提案のほうが有利です。

ヤフーはマイクロソフトの提案を拒否しましたが、ヤフー側に具体的な案がなければ、ヤフーのジェリー・ヤンCEOは窮地に陥り、株主に見放されてヤフー自体が転落の一途をたどると思います。

そもそもヤフーは1000人規模を人員削減するなど瀬戸際に来ていました。マイクロソフトに起爆力はありませんが、豊富な資金力を背景にした“包容力”はありますから、窮地は逃れられます。ヤンCEOがいくらゴネても、マイクロソフトのほうに行かざるを得ないのではないか、と思いますね。

ニューズは先ごろウォールストリート・ジャーナルを買っていますので、経営資源にも余力はないと思います。一方、マイクロソフトは、人材が余っているほどの状態ですから、ヤフーを取り込み、少し外向きの仕事をやることで、風通しもよくなるかもしれません。

ヤフーは買収額が安すぎると言っていますが、60%のプレミアムというのは過去のM&Aの歴史から見てもかなり高いものです。その状況で万が一、マイクロソフトが買収をあきらめたら、ヤフーの株価は暴落するでしょう。

 
 
テーマ2:BDもすぐに「時代遅れ」の可能性
東芝は次世代DVD規格「HD DVD」事業から撤退すると発表した。これにより、同規格はソニーや松下電器が進めるブルーレイ・ディスク(BD)に一本化した。
 

米国の主な映画会社のDVDソフト販売金額シェアでは、BDが3分の2を占め、販売台数もブルーレイ400万台に対し、HD DVDは100万台です。ここまできたら、かつてのVHSとベータのようになることは必至でした。

ベータが劣勢になっていたころ、ソニーの大賀典雄社長(当時)は新聞の全面を使って「ベータは粗大ゴミか?」という“反論広告”を展開しました。しかし、これがさらに裏目に出て、その直後のソニーの株主総会は紛糾。13時間半もの記録的なロングラン総会になりました。それがベータ最後の“打ち上げ花火”でしたね。

これに対し、東芝の西田厚聰社長は竹を割ったような性格の人ですから、「やめました。ごめんなさい。あとは補償します」と発表したわけですが、補償のしようがないと思いますね。ハードを買う人は10年使うつもりで買うのですから、もし本当に西田さんが補償するというのなら、今後10年間HD DVDのソフトを出し続けなければいけません。

ただ、私が前から言っているように、実はBDも、これから徐々に「お呼びじゃない」存在になると思います。すでにユーザーはDVDではなく、ハードディスク(HDD)に録画しています。今後、ブロードバンドがもっと高速・大容量化すれば、ネットからソフトをダウンロードしてHDDに録画するという習慣が当たり前になります。ディスクで残しておきたいのは、「風と共に去りぬ」のようなごく一部の名画のみ、ということになるでしょう。

実際、私もBDレコーダーを持っていますが、ソフトは持っていないので、プレーヤーとして使うことはありませんし、テレビ番組の録画はHDDで行っています。

だから私は、BDもHDも両方とも「ご苦労さん」ということになると思います。もしかしたら西田さんは、そうした結末をも見込んで撤退を決意したのかもしれません。

 
 
テーマ3:米モトローラ 携帯事業身売り検討
米モトローラは先月、携帯電話事業の分離を検討すると発表した。携帯事業は同社の売上高の約5割を占めるが、販売不振で赤字が続いており、競合他社への身売りも検討している。
 

日本のNECや富士通が元気なら、モトローラ全体を買うかもしれませんね。モトローラは軍事関係も手がけていますので、その部分だけは切り離さねばならないでしょうが。

モトローラは最初の本格的な携帯電話を作った会社で、赤字とはいえ世界シェアはノキアやサムスンに次いで3位です。安い製品を作る技術もあり、非常によい素地を持っています。

売値もそれほど高くはないと思います。とくに日本の携帯電話業界はNTTドコモ中心で進んできたので、ソニー・エリクソンを除いて世界化ができていません。ここで世界企業のモトローラを手に入れることは、日本の通信機器メーカーには千載一遇のチャンスと言えます。

ただ、かつてモトローラのテレビ部門(クエイザー)を買収した松下電器は大失敗しています。モトローラは売却部門をかなりドレスアップして売る傾向のある会社なので、本気で買収するのなら今から入り込んで“査定”しなければいけないでしょう。

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