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2008年5月23日号
IT・デジタル関係をテーマにした「大前研一のIT時評」が夕刊フジで毎月第四金曜日に掲載されております。
 
テーマ1:ヤフー ヤンCEOお先真っ暗
米マイクロソフトは米ヤフーの買収を断念した。総額446億ドル(約4兆6000億円)の買収額を提示したが、より好条件を求めるヤフーとの折り合いが付かず、交渉は決裂。マイクロソフトは急成長するネット検索最大手グーグル追撃に向け、戦略の再構築を迫られることになった。
 

マイクロソフトの買収提案をあくまでも拒否すれば、ヤフーの株価は暴落し、ヤフーのジェリー・ヤンCEOは責任をとらされるだろう、と私はこれまで述べてきました。

実際、マイクロソフトが買収を断念したことでヤフーの株価は下がりました。ヤンCEOは、自分たちは交渉しているつもりだったがマイクロソフトが勝手に断念した、と言っていますが、こんな言い訳はよくありません。双方ともに株主がいるわけですから、もっと真面目に対応するべきです。ま、その期待感で株の暴落が避けられている状況ですが。

私は、マイクロソフトが提示した買収額は妥当な額だったと思います。マイクロソフトが撤退したことで、ヤンCEOはグーグルに泣きつくしかありませんが、グーグルやルパート・マードック率いるニューズ・コープがヤフーを買うことはないでしょう。

ヤフーは自力で反転することはもうできないと思います。したがって、ヤンCEOはいずれ辞任せざるを得ないでしょう。

 
 
テーマ2:戦略家ソフトバンク 破竹の勢い
携帯電話大手3社の2008年3月期の連結決算が出そろった。NTTドコモが2期ぶりの減収になった一方、KDDIとソフトバンクモバイルは売上高、営業利益とも過去最高を記録した。
 

ドコモが一人負けで、とくにソフトバンクが大躍進、と報道されています。たしかに、相対的に見るとその通りですが、違う見方をしておく必要があります。

ソフトバンクはボーダフォンを買収して大手の一角に入ったことで売上高が3兆円近くに拡大し、利益も出るようになりました。これは間違いありませんが、純利益という面から見るとドコモやKDDIには及びません。

ドコモは約4兆円の売り上げに対して5000億円の利益を出していますが、ソフトバンクは2兆7000億円の売上高で1000億円しか利益が出ていません。売上高利益率から言えば、2倍以上の違いがあります。

したがって、ドコモがあと5%分の利益を投げ出すような安値攻勢に出れば、ソフトバンクを追い落とすことは可能です。

しかし、ドコモは戦略が下手で、他の2社よりも高収益という強みを使い切れていません。強みを生かせればKDDIやソフトバンクをもっと苦しめることができるのですが、それができず、一人で勝手に苦しんでいるという状態です。おそらく固定電話で経営が苦しくなっているホールディングカンパニーからは、もっと利益を上げてくれ、と言われているからでしょう。

営業利益率でも純利益率でもドコモは依然として強いのですが、図体がでかいために戦略不在で、自分が何をやればいいのか分からない状態に陥っています。

一方、ソフトバンクは一点豪華主義で市場に入ってシェアをとり、勢いに乗っています。この勢いに株価がついてくれば、第三者割当増資などによって2兆円近くある借金を返すことも可能になります。つまり、敵失で自分の借金を返せるメドが立ってきました。

ソフトバンクの孫正義社長は戦略家ですから、ドコモがもたついている間に自分たちのほうが将来は明るいというイメージを振りまき、株価を上げる戦略に出ているのでしょう。増資で借金を返済するという策を練っているのではないかと思います。

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