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2008年6月27日号
IT・デジタル関係をテーマにした「大前研一のIT時評」が夕刊フジで毎月第四金曜日に掲載されております。
 
テーマ1:米ヤフー グーグル提携も“勝ち組”は?
米ヤフーは、ネット検索最大手のグーグルと北米での広告事業で提携すると発表した。ヤフーの検索サービスにグーグルが広告を提供する。
 

これで決着するとなると、グーグルにはよいかもしれませんが、ヤフーの株主はがっかりでしょう。

両社はネット検索、ネット広告で1、2位の企業ですから、当然ながら独禁法の調査対象になります。マイクロソフトも当局に調査を仕掛けるでしょうから、実現の前に法廷に持ち込まれる可能性もあります。

ところで、米タイム誌は21世紀のネットスペースを牛耳るのは誰か?と題して、グーグルとアップル、そしてフェースブックを挙げています。同誌は、いずれの企業にもチャンスがある、と書いていますが、私はフェースブックもかなり面白い存在だけれど、やはり影響力の波及範囲を考えると(たとえヤフーとの提携がなくても)グーグルなのかなと思いますね。

 
 
テーマ2:ソフトバンク iPhone意外に伸びず!?
ソフトバンクモバイルは米アップルの携帯電話機「iPhone 3G」を7月11日に発売すると発表した。好調なソフトバンクが欧米の大ヒット機種を確保し、最大手のNTTドコモに挑む構図だ。
 

私は日本ではiPhoneそのものに魅力がなく、それほど伸びないだろうと思っています。iPhoneは発売から1年たちますが、いま世界でも600万台ぐらいの売り上げで、当初の予想に比べると少ない。また、携帯電話会社やコンテンツ提供者に対するアップルの取り分が大きすぎるのも問題です。

私も、自分たちが作ったコンテンツをiTunesストアを通じてiPodに流したいのですが、売り上げの75%をアップルに納めなければいけないというので二の足を踏んでいます。

アップルのスティーブ・ジョブズCEOは、よい製品を作り出しますが、独占的立場を利用して多大のマージンを要求する、オペレーターは1社で選べない、など価格や流通政策面ではあまりにもあこぎだと私は思います。

さすがに最近は多くの国で携帯オペレーターを複数にして選択できるようにしました。サムスンをはじめ、多くの企業が世界中でアップルに依存しないでも同じことができる機種の開発に余念がありません。iPhoneが予想より伸びていないのも、そのへんに原因があるのではないでしょうか。

ソフトバンクの孫正義社長にはiPhoneを使った“隠し球”が何かあるのかもしれませんが、日本でのインパクトは小さいと思います。

日本の場合、iPhoneのような機能は既存の製品でほとんど達成しています。しかも、大半の利用者は携帯電話のキーを片手の親指で操作することに慣れていますから、iPhoneのような画面へのタッチ式操作はなかなか受け入れられない可能性があります。

 
 
テーマ3:ドコモ 圧倒的な契約者利用する反攻策
NTTドコモの新社長に山田隆持氏が就任した。
 

私が会長をつとめていたマッキンゼーは、ドコモがNTT移動通信網だった時代に社長の大星公二さんから頼まれて戦略を練ったことがあります。端末の売り切りやiモードの原型となるプランを提唱し、それを大星さんが強力な指導力で実行したことで、ドコモはいまの隆々たる地位を築き上げました。

そこで、「もしも私が山田新社長からドコモのコンサルティングを頼まれたら」という視点で、ドコモの“反転策”を考えてみましょう。

まず、ドコモの現状を見てみます。現在、売り上げ、利益とも低迷していると言われますが、2007年度の営業利益率は17.2%でソフトバンクの11.7%、KDDIの11.1%に比べても高い。利益剰余金も3兆円近くあります。純増数では他の2社に負けていますが、契約者数自体は増え続けています。1ユーザーあたりの月間平均収入(ARPU)も2社より高いという状況です。

ところが株価は、ここ数年一貫して低迷しています。利益を少し吐き出してソフトバンクと戦えればいいのですが、利益を吸い上げたいNTTの持ち株会社が自由にさせてくれない点がネックになっています。

現在のNTTは、光回線を各家庭まで引き込み、ドコモの携帯電話を自宅の電話の子機のようにして使うという固定電話と携帯電話の融合プランを考えています。ドコモにとっては減収要因ですが、光回線が普及するためNTTグループ全体の収益向上にはつながるというわけです。

では、山田さんに雇われたら、私はどうするか? まず、ドコモが強い部分を考えてみましょう。

ここで注目したいのはドコモの契約者数、5354万人という数です。これはJCBの会員数より多く、NTT東西を足した固定電話の契約者数よりも多い。企業別サービス利用者数ではトップです。

この契約者数とドコモのインフラを生かせるビジネスといえば、第1に「認証・決済業務」、第2に「課金業務」です。電話料金の競争でソフトバンクと泥仕合をするよりも、自分が有利なフィールドで戦うのです。

認証・決済業務としては、銀行(モバイルバンク)、入出金、カード決済、コンテンツビジネス、電子認証などのビジネスが考えられます。

また、モバイル広告への課金業務も有望です。5000万人以上の人が触れるメディアですから、テレビの視聴率で言えば50%。NHKの紅白歌合戦を軽く超える数字です。広告を見てもいいと了承した人には携帯電話料金を割り引く制度を適用しても広告収入で十分にお釣りがくるでしょう。

一方、ドコモが不利になるビジネス展開とは何か? まずは一斉値引き。1人100円値引きしたら全体で50億円の損失になります。イー・モバイルが行っているような、ニッチな分野でのセグメント戦略や定額制なども、巨大なドコモには不利になります。

逆に、富裕層を対象としたコンシェルジェサービスなどは有利でしょう。ドコモには比較的富裕な顧客が多いので、その利点を資産運用や旅行相談などに最大限生かすことです。

企業規模を背景にすれば海外の電話会社や金融機関と有利な交渉ができますから、海外通話料金の定額化や海外の銀行口座、クレジットカードなどへのネットワーク拡大も図れます。

ドコモはネットワークが充実しているので、インフラを事業者に貸し出すMVNO事業や、機械間で通信する「M2M」―自販機が定期的に残り本数を本部のコンピューターに報告する通信網など―の市場も有望です。

NTTが、インフラの完全開放などを条件に何かと縛りの多いNTT法の廃止を実現すれば、これらのビジネスはやりやすくなります。山田新社長が今後、持ち株会社とどう折り合いを付けていくか、カギを握るのはソフトバンクではなく親会社、ということになるでしょう。

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