ビル・ゲイツという人は非常に重要な人物で、100年後に歴史家が振り返ったとき、「ゲイツ前」と「ゲイツ後」では世界が変わったと判断すると思います。
10年ほど前、私は彼と話したことがあります。そのとき彼は「自分はワシントン(米政府)が嫌いだ。だから、1975年に創業して以来18年間、一度もワシントンに行かなかった」と語っていました。
しかし、同社製品をめぐる独占禁止法違反訴訟が起こされたことで、さすがの彼も93年にはワシントンに行かざるを得なくなりました。そこで注目すべきは、常に彼自身が法廷や議会で証言や自説を主張したことです。
マイクロソフトほどの大きな会社であれば、法務担当役員などの専門家を法廷に出すものです。しかし、ビル・ゲイツはすべてを自分が引き受けました。この「逃げない」という意味において、彼は傑出した人物です。
また、結婚した奥さんも非常に偉いですね。メリンダ夫人は、多くの金持ちの夫人たちとは対極的な人物で、ビル・ゲイツの金銭に対する価値観を十分理解し、それを体現しています。
ビル・ゲイツという人は世界一の金持ちになった後も、買い物のときにスタンプを集めて次回の買い物では割引してもらうという人だそうです。アメリカの典型的なミドルクラスに育ち、世界一になった後も自分の価値観を失わないという点はすごいと思います。
それにしても、ビル・ゲイツはまだ52歳です。私はまだ、彼がマイクロソフトのかじ取りを続けてもいいのではないかと思いますが、一方で、資産の大半を慈善活動につぎ込むという生き方は素敵だなと思いますね。超高齢になってもなかなか引退しない日本の経営者とは大違いです。
ビジネスの世界ではいろいろと言われましたが、独占的な立場を確保するために囲い込みを行うのは、ビジネスの鉄則です。しかも、実際には司法省が懸念したような「独占」は起きず、ファイアーフォックスやグーグルが台頭してきたのは、ご存じの通りです。
ビル・ゲイツを嫌いな人はたくさんいますが、サイバー社会を加速させた中心人物として、私は彼を高く評価しています。 |