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2009年10月23日号
IT・デジタル関係をテーマにした「大前研一のIT時評」が夕刊フジで毎月第四金曜日に掲載されております。
 
テーマ1:電子書籍端末「キンドル」日本で根付くか
米アマゾンは日本を含む世界100カ国以上で同社の電子書籍端末「キンドル」を発売すると発表した。価格は279ドル(約2万5000円)で、当初は英語書籍のデータを配信するが将来は日本語データも扱う計画だという。
 

日本でも過去にソニーやパナソニックが電子書籍端末を発売しましたが、いずれも撤退しています。しかし、キンドルはうまくいくと思います。いままでのものに比べると非常に簡便で、本を読むということに特化している点が評価できます。複雑ではない、ということですね。ページめくりなども簡単です。

ソニーの端末はアメリカで花がもう1回開いており、グーグルなどはソニーの端末を使ってアマゾンに対抗しようとしています。

しかし、アマゾンのほうがグーグルよりも有利です。もともとが本を売るということから事業を始めた会社ですから、すでに引き落としの口座を豊富に持っています。対するグーグルは「チェックアウト」という引き落としサービスを提供していますが、これに登録している人は少ないのが現状です。

グーグルは無料のサービスでは先行していますが、有料のサービスを行うには、この「チェックアウト」に登録するという一手間をユーザーに強いることになります。

キンドルは、従来の書籍購入の仕組みを利用できますし、絶版の書籍もデータとして配信できます。実際に、すでにキンドルを利用している人の評判は上々です。

ただ、私がアマゾンの現在の戦略に疑問を感じるのは、アマゾンのウェブページがキンドル偏重になっている点です。キンドルで配信する書籍データはアマゾンの商品の一部にすぎませんが、リンクをクリックすると、すぐにキンドルのページに飛び、なかなか戻ることができません。独占的な立場を利用して強引な商法をやっているように見えます。

かつてアマゾンは評論家に好意的な書評を書かせて本を売るという手法をとって中立性を疑われたことがありました。今回のキンドルの戦略を見ると、ジェフ・ベゾスCEOはまだ反省していないのかなあという気がしますね。

キンドルは成功すると思いますし、将来の書店の究極の姿はこれだと思いますので、アマゾンにはぜひ戦略を見誤らないでほしいですね。

 
 
テーマ2:英でTV抜く 広告はネットが主流
英国の業界団体などがまとめた調査結果によると、同国の今年4―6月のネット広告への企業支出額は前年同期比4.6%増加した。広告市場全体に占めるシェアはネット広告が23.5%となり、テレビ広告の21.9%を抜いて首位に躍り出た。
 

検索連動型の広告が牽引したようです。ただ、実はイギリスはちょっと事情が特殊なのです。テレビは公共放送のBBCが非常に強く、ここはCMがないため、テレビ広告の市場規模はそれほど大きくありません。しかし、イギリスでネットがテレビを抜いたということはやはり画期的なことです。

日本の場合、テレビ広告の構成比は30%程度で、ネットは10%をようやく超えたところです。雑誌を抜いて、もうじき新聞を抜くとみられていますが、まだテレビの3分の1の規模です。

しかし、2011年に地上デジタル放送に切り替わると、テレビもネットも変わらなくなってしまいます。地デジでネットが見られますから、広告もネットなのかテレビなのか、区別がつかなくなることでしょう。

 
 
テーマ3:ネットブック好調
世界半導体市場の底入れ感が強まっている。SIA(米半導体工業会)がこのほど発表した8月の世界半導体売上高は前月比5%増の190億6000万ドルとなり、前月実績を6カ月連続で上回った。ネットブックの販売が好調なことなどが背景にあるとみられる。
 

ネットブックもそうですし、前述したキンドルなど携帯端末の売れ行きも売り上げに貢献しています。東芝の半導体も、ひところは赤字に苦しんでいましたが、この半年で黒字化したと言われています。

価格の落ち込みも止まって、底入れ感が出てきたようですから、各企業には明るいニュースでしょうね。

 
 
テーマ4:半導体市場底入れ サムスン営業益1兆円の勢い
韓国サムスン電子は2009年7月期(7―9月)の連結営業利益が前年同期比2.8倍の4兆1000億ウォン(約3160億円)となる見通しを明らかにした。半導体と液晶パネルの取引価格が上昇したほか、薄型テレビや携帯電話が好調だったことが寄与したという。
 

昔は「鉄は国家なり」と言っていましたが、いまは「半導体は国家なり」で、すべての産業に半導体が入っているため、産業の復興具合を見るには半導体は非常によいバロメーターとなります。

ただ、サムスンのライバルといえるソニーの電子関連事業を見ると、まだ苦労しているようです。V字回復はしていますが、まだ赤字でサムスンには及びません。サムスンは、このベースで換算すると、かつて記録した年間営業利益1兆円に届く勢いとなりそうですね。

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