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2009年11月27日号
IT・デジタル関係をテーマにした「大前研一のIT時評」が夕刊フジで毎月第四金曜日に掲載されております。
 
テーマ1:ソニー先見の明 データ管理を集約
ソニーは社内情報システムの運用拠点を集約する。現在は約60拠点で生産や製品の受発注関連のデータを管理しているが、2015年をメドにアジアと欧米に大規模なデータセンターを1つずつ整備し、各地の機能を統合するという。
 

ソニーは非常に敏感ですね。いま、世界中からデータセンターを呼び込んでいるのはシンガポールです。このままいくと、日本にデータセンターはなくなってしまうのではないかと思えるほどシンガポールはいろいろな優遇策をつくっています。

シンガポールはITで立国するという目標を立て、早くからさまざまな取り組みを行っています。そのひとつがデータセンターの誘致です。これにはいろいろなインセンティブがあるので、ソニーも注目しているわけです。シンガポールには地震がありませんので、ディザスター(災害)に強いという利点もあります。もちろん回線の質もコストも競争力があります。

ソニーはアジアだけでなく、世界2カ所でデータセンターを運営するということですから、何かあってもどちらかでバックアップできますね。FedEx(フェデックス)やDHLなどの世界的な運送会社も世界3カ所ほどで分散して、24時間、地球を一周する形でデータを管理しています。

それに比べて、他の日本企業は反応が鈍い。たとえば東京のある大企業はバックアップを隣のビルでやっています。大震災などが起きれば、データは一緒に消えてしまいます。

ソニーの決定はシンガポールの優遇策に引っ張られたものだと思います。日本の国や企業はデータの管理ということについて、もう少し危機感を持つべきですね。

 
 
テーマ2:攻勢ゲオ“次戦略”構想を
米国の音楽配信市場が拡大を続けている。7―9月期にはアップルが最高益を更新、iPhoneやiPod向けの音楽・動画配信は2ケタ成長が続いている。一方、日本でもレンタルビデオ店を展開するゲオが2010年3月期連結決算の営業利益予想を上方修正した。
 

アメリカのタワーレコードなどの売り上げは落ち、民事再生に陥りました。iPod向けネット配信のiTunesストアが伸びているのに対し、日本ではゲオの売り上げが伸びているというのは不思議な感じがします。

ゲオはツタヤを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブを2006年に売上高で抜き、営業利益でも抜きそうな勢いとなっています。

ゲオは日本マクドナルド創業者の藤田田さんが一時期、株を持っていました。私は藤田さんがゲオの将来に非常に期待していたのを覚えています。実際、ゲオが今やっていることは私が昔から提唱していたことでもあるのです。

私は、ビデオがVHSテープからDVDになると、レンタル料は無料に近い低価格にできると提唱していました。VHSテープは再生すればするほど劣化するので補充が必要ですが、DVDは何回再生しても劣化せず、追加費用がかからないからです。

ゲオは数年前から、古い映画などは100円でレンタルするというサービスを展開しています。DVDはいくら回転させても物理的な接触がないので劣化しませんから、100円で5、6枚借りてくれる人がいれば十分に利益が出るのです。

こうした安値攻勢でゲオはシェアを取り、利益を出しています。ただし、2011年ごろから光ブロードバンドや地デジで一気に映像をダウンロードする時代がやってきます。ゲオが今のままの戦略だと、どこかでつまづくかもしれません。

 
 
テーマ3:最もすぐれたCEOは米アップル・ジョブズ氏
米経済誌フォーチュンは過去10年間の最もすぐれたCEOとして、米アップルのスティーブ・ジョブズ氏を選んだ。iPodやiPhoneなどのヒット商品を開発し、同社に好業績をもたらしたことが評価された。
 

たしかにジョブズ氏が帰ってきてからのアップルは見事です。やることがユニークで、固め方もうまいですね。iPodを売り出して、iTunesストアにまで展開させる。ビジネス的に統合されています。iPhoneも、関連のアプリがとめどもなくリリースされています。

こうした発想と事業展開の方法、ハードとソフトを一体化したサイバースペースへの切り込み方は見事というほかないですね。

しかも、難しい交渉は全部ジョブズ氏がやっています。ローリング・ストーンズの曲をiTunesストアで配信する際は、ミック・ジャガーとの交渉をジョブズ氏自身が行いました。こういう困難なことも自分でやる点が彼の特徴でしょう。このフォーチュンの選択については、私もまったく異論はありません。

 
 
テーマ4:電子マネー「Edy」世界標準なるか
楽天は、プリペイド型電子マネー「Edy(エディ)」を手がけるビットワレットと資本提携すると発表した。一方、米のインターネット決済サービス大手「ペイパル」は来年にも日本市場に参入する方針を明らかにした。
 

エディは、ソニーのフェリカという技術をもとにしています。フェリカは世界的なプラットホームになる可能性があったのですが、当時の出井伸之さんがこれを決済の世界標準となるべくプラットホーム化する、ということをやらないで単なる部品として、各企業に売ってしまいました。

そのため電子マネーは、エディやSuica、パスモなど全部違うやり方で流通することになり、読みとり機に共通性がないなど大混乱が起きています。ソニーはまったくフェリカの価値を理解していなかったわけです。

エディはもともとユーロ(Euro)、ドル(Dollar)、円(Yen)の頭文字を取ったもので世界の通貨を置き換える、という高い志を掲げて始まったものですが、当時のソニーの経営者たちはこれを十分に理解していなかったのです。

私は楽天がもう一度エディの価値を上げ、世界の通貨にするんだという意志で取り組めば、iPodのような世界標準をつくることができるかもしれないと思います。楽天がそこまでの考えをもってビットワレットと資本提携したのかどうかは不明ですが…。

一方、ペイパルはアメリカのオークションサイト「イーベイ」の子会社です。オークションで送金者と受け手の間に入って決済を代行する業者で、受け手側は送金者にメールアドレスを教えるだけでお金のやり取りができてしまいます。アメリカでは非常に利用者が多いのですが、これが日本にも入ってくると便利になると思いますね。問題はこうした仕掛けを日本のユーザーが信頼するかどうかだと思います。

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