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2008年1月25日号
IT・デジタル関係をテーマにした「大前研一のIT時評」が夕刊フジで毎月第四金曜日に掲載されております。
 
テーマ1:松下「パナソニック」に社名変更 企業の世界化へ不可避
松下電器産業は、社名を製品のブランド名である「パナソニック」に変更すると発表した。実施は10月1日。「ナショナル」ブランドも廃止し、グループ会社などの名称もすべてパナソニックに統一する。
 

私はことあるごとに、グローバル企業を目指す会社は社名とブランド名を統一すべきだと発言してきました。松下電器は複数ブランドを抱え、よくない事例の筆頭でしたが、今回ついにこれに終止符が打たれましたね。

企業の世界化にとって、名前の統一は避けて通れない「運命」のようなものです。社名とブランド名が一致しない企業は、いずれも世界市場で苦労しています。

ブランド名を社名に変えるという方法もありますが、これはあまり功を奏していません。日産はかつて、「ダットサン」のブランド名で米国市場を席巻しましたが、ブランド名を強引に「ニッサン」に変更したことで大変な無駄をしたうえに米国市場でホンダやトヨタに大きく差をつけられました。

「トリオ」も「ケンウッド」に変えざるを得ませんでしたし、東芝(東京芝浦電気)もブランドに変えました。例外は「三菱」です。米国人にとって「ミツビシ」は発音しにくい言葉ですが、頑固に長く使い続けた結果、なんとか認知されています。ダイムラーは米国ではメルセデス、日本ではベンツ、ドイツでダイムラーとして知られています。何とかなっている理由はあの三つ星マークが世界共通だからです。同じマークを見て違う言葉を発すのですから奇跡に近い綱渡りです。

「シャープ」についても、私は「形容詞をブランド名にするのは最悪だ」といくつかの著書に書いていますが、数ある問題企業の中でも一番問題だったのが松下です。

松下は、パナソニック以外に「ナショナル」「テクニクス」「NAIS」などのブランド名を持っています。それらすべてが社名とは異なりますので、それぞれのブランドを育てるにはとてつもない金がかかります。商談相手に名刺を出しても、すぐに分かってもらえないという弊害もありました。

実は、「パナソニック」のブランド名は米国で好印象を持たれています。また、松下電器はソニーより4倍ぐらいの収益を出しています。ところが時価総額は一時、ソニーより1兆円も水をあけられていました。なぜかというと、ブランド名と社名が一致しないため、投資家が投資しづらいからです。株を買おうと思っても、どこの会社の株を買えばパナソニックになるのか、海外の人には分かりません。

結局、松下はパナソニックに統一するしか道はなかったということです。今回の決断はたしかに英断ですが、この問題はソニーが海外で活躍しはじめたころから議論されていたことで、決断が40年遅れたという感もありますね。名称統合をせめて10年前にやっていれば、おそらく世界全体では数兆円規模の無駄な出費を抑えられたと思いますし、ブランドでサムスンやLGなどに負けることもなかったでしょう。

 
 
テーマ2:シャープ 液晶TV世界シェア拡大へ
シャープは今年度の液晶テレビ世界売上高を昨年度比17%増に拡大する方針を明らかにした。
 

前述したように、シャープにもブランド名と社名の問題があるのですが、国内ではそこそこ好調です。ただ、2004年にはダントツだった世界シェアは現在、フィリップスやサムスンなどと拮抗(きっこう)しており、欧米や中国でのシェア拡大が急務です。

とくに中国での売り上げを倍増することが喫緊の課題でしょう。収益的には非常にきつくなると思いますが、まずはシェア拡大という道をシャープが選んだ、ということですね。

 
 
テーマ3:ソフトバンク ホワイトプラン1000万件突破
ソフトバンクモバイルの契約者同士が定額料金で利用できる「ホワイトプラン」の契約者数が、約11カ月で1000万件を突破した。
 

これが成功しているのかどうかの評価を下すのはまだ早いと私は思います。ホワイトプラン実施後の各社の契約者数推移を見ると、ドコモは横ばいでauは依然として伸びています。純増数を見ても、差はありますが3社とも伸びています。

契約者1人あたりの月間売上高(ARPU)を調べてみると、ソフトバンクはここ数年ずっと最下位で、しかもホワイトプラン導入後のARPUは発表していません。おそらく定額制を導入したことで、ARPUは以前より下がっているはずです。純増数はこの間200万人規模だったということですから、既存契約者のうち800万人がホワイトプランに転換した、ということになります。

契約者数が増えてもARPUが減っているとすると、正味の収入も減っていると予想されます。1兆円以上借りている金利の支払いもありますので、この3月の決算を見ないと経営の実態が改善したのかどうか判断できないでしょう。

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